Ride on a ちゃり

パワー不足のエンジン搭載ロードバイクの走行記録

八ヶ岳-天狗岳、本格的な登山を試してみました。

ここ数年夏休みは、車に自転車を積み込み、週末二日間ではチャレンジできない絶景コースを走ってきました。しかし、同行する奥様に一日時間を潰してもらう企画が必要となる点が問題でした。今年から定年再雇用の身になり、遠征のための休暇も取りやすくなったので、夏休みの旅行に無理くり自転車を組み込む必要性は大幅に減少、そこでシンプルに夫婦で登山という夏休みにしてみました。また、峠まで自転車、そこから登山というスタイルを確立するために、次の二点を確認することが重要命題です・・・やっぱり自転車か!

  • 登山の必要装備の確認
  • 本格的な登山を経験し、自分の限界点を把握する

目的地に選んだのは八ヶ岳です。**アルプスの山々にいきなりチャレンジするよりも敷居が低い気がしたことに加え、昨年秋に、麦草峠を往復した際に一日中八ヶ岳を眺めていて、いつかあそこへとの思いが刷り込まれました。ガイドブックを入手して調べて見ると、八ヶ岳は夏沢峠を境に北八ヶ岳南八ヶ岳に分かれていて、北八ヶ岳の方が初心者向きのようです。最高峰の西岳(2,899m)は南八ヶ岳にあり、日帰り登山というわけには行かず、一泊二日のコースとなります。まずは目的地を北八ヶ岳に絞り込み、その中から天狗岳(2,646m)を今回のターゲットに決めました。「なだらかな山の多い北八ヶ岳にあって天狗岳は申し分なく登り甲斐がある」というガイドブックのコメントにまんまと嵌ってしまいました。

天狗岳には渋の湯コース、唐沢鉱泉コース、夏沢鉱泉コースの3つの登山コースがあり、今回は最も距離が短く、周回コースとなる唐沢鉱泉コースを選択、距離にして8km、コースタイムは5時間45分です。休憩を十分とったとしても8時間くらいで歩けるだろうという目論見でした。

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登山装備で迷ったのが登山靴です。登山専用の靴を利用するのがベストなのは当然ですが、登山靴を背負って自転車ヒルクライムは現実的ではありません。登山経験者に聞いてみると、「背負う荷物が10kgを超えるなら底のしっかりした登山靴が必要だが、荷物が軽ければトレランシューズでも対応可能でしょう」と教えてもらい、愛用のトレランシューズでチャレンジすることにしました。もう一つ迷ったのは、登山用ストックです。最近の登山スタイルでは必需品となっていますが、これがまたピンからキリまであります。これも自転車ヒルクライムを考えると、軽量、コンパクトであることが求められますので、少々値段はしましたがカーボン製で折りたたみ式のものを選択しました。

9:15@ベースとなる唐沢鉱泉駐車場(1,870m)に到着。当初の計画では、8/1の深夜に横浜を出発して早朝から登山、その日は蓼科温泉に宿泊し、8/2にゆったり帰宅の予定でしたが、8/1の天気は午後から小雨の予報です。このため計画を変更して蓼科温泉に前泊、8/2に登山となりました。温泉宿で朝食を済ませてからの出発となったため、駐車場が満車じゃないかと心配でしたが、駐車率は50%程度で楽々駐車できました。

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気温は20℃、駐車場で登山準備を整えます。ベースレイヤーは長袖アンダー&ライトトレールタイツ、ミドルレイヤーはストレッチショーツとポロシャツという服装です。水1L、食料(おにぎり2個、スティックパン1袋、エナジーゼリー1、羊羹1、お菓子色々)、ウィンドブレーカー(自転車用)、長袖ジャージ(自転車用)をドイターのリュックに入れ、総重量3kgの荷物です。

9:27@枯尾ノ峰分岐を目指して出発しました。

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渓流を渡ると蓼科特有の苔の森に入ります。

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尾根筋を目指しシラビソの原生林を登って行きます。この登りで登山用ストックが威力を発揮してくれました。自宅で練習した際には、右手と右足が同時に前に出てしまい、どうなることやらと心配でしたが、現実の斜面は実に不規則、三点支持だけを心がけて進む事で、自然とリズムが生まれました。

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10:16@尾根筋に出ると同時に虻とブヨの攻撃が強まります。虫除けスプレーを使用すると一旦退散しますが直ぐに纏わり付いてきます。トレールタイツの上からもチクリとやられました。

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尾根筋といってもかなりの傾斜を登って行きます。この手の登りではストックが大活躍します。

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12:08@ようやく第一展望台に到着。ガスっていて残念ながら視界はほとんどありません。所要時間2時間40分とコースタイムから1時間遅れです。途中で虫対策をしたり、お腹が減っておにぎりを食べたりして遅くなりました。

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12:50@這松とシャクナゲを掻き分けながらの尾根筋を歩いて第二展望台に到着。ここもコースタイム25分に対し42分もかかってしまいました。まだ半分もきていません。この先が不安になります。

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展望台には我々夫婦しかいないのですが、何故か人の声が聞こえてきて不気味でした。視界が悪いので、せっかくの展望台ですが、撮影対象は高山植物しかありません。

ウルップソウ

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ミヤマシオガマ

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コバノコゴメグサ

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突然、雲が流れ目の前に天狗岳が姿を現しました。眼前の壁といった感じで、あれを登るのかと俄には信じられません。ガイドブックに大岩登りと書いてあったのは これか! と納得です。

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さらに目をこらすと、な、なんと岩場に人影が見えます。先ほどの人声は、この岩場の人達の声が反響して聞こえて来たようです。

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12:55@第二展望台を出発、一旦下って西天狗岳アタックを開始しました。いよいよ先ほどの大岩ゾーンに突入です。ストックは一旦しまって、両手両足で岩を掴み登って行きます。こんな登山は初めての経験です。ここで唐沢鉱泉へ下る人とすれ違いましたが、登る以上に苦労していました。

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途中で振り返ると第二展望台が眼下に見え、自分の高さを感じます。

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難所の大岩ゾーンを突破すると緩やかな登りが山頂へ続いていました。この写真の傾斜が緩やかに感じるようになっています。

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13:42@西天狗岳(1,646m)に到達。季節によっては混雑する山頂も今日はガラガラでした。

14:00@エネルギー補給して、後半戦に挑みます。ちょうど雲が切れて、これから向かう東天狗岳と天狗の鼻の岩稜が見えて来ました。隣の根石岳も見えます。こういう景色を拝めるとここまでの苦労も吹っ飛びます。

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14:19@ガレ場を下って登り返すと東天狗岳(2,640m)です。唐沢鉱泉を出発してから5時間弱かかってしまいました。ここから先は下りになるのでペースアップするはずだったのですが、そう簡単にはいきませんでした。

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14:25@中山峠を目指して出発。ガスで天狗の鼻が見えなくなります。

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下りですが足場が悪く、慎重に、慎重に足を進めます。膝や関節への負担は登り以上で疲労が蓄積していきました。

14:52@雲が切れ、眼下に黒百合平が姿を現しました。擂鉢池と山小屋が見えて少し元気が湧いてきます。

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行く手に大岩ゾーンが出現し、簡単には黒百合平に近寄らせてくれません。

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黒百合平まで下ってくると、東と西の天狗岳がはっきり見えます。このタイミングに山頂にいれば、絶景を拝めたでしょう。

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15:41@中山峠に到着。かなり疲れていて記録写真を撮り忘れ、お恥ずかしい写真を使うしかありませんでした。

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15:48@黒百合平ヒュッテ。中山峠からは木道が整備されており、久しぶりに歩きやすい道でホッとします。ここでようやくトイレ(有料200円)を利用することができます。

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ここからの登山道は沢を下っていきます。沢沿いの登山道ではなく、沢そのものの石の上を歩いて行かねばなりませんでした。黒百合ヒュッテの標高は2,400mですので、唐沢鉱泉までまだ500mは下る必要があります。沢に水はありませんが、苔むした石は滑りやすくペースは上がりません。虫の攻撃がほとんどなくなったのが唯一の救いです。

16:55@最後のランドマークとなる渋の湯との分岐ポイントを通過。だいぶ暗くなってきました。ヘッドランプまでは用意していないので、日没までに戻れるのか不安になってきました。夫婦共疲労が蓄積し、会話する余力もなくなってきました。

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どこまでも続く苔むした原生林の中を黙々と進み、18:10@唐沢鉱泉源泉に到着、なんとか無事に帰還しました。

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ヘロヘロの状態で帰宅準備をして、薄暗い中、唐沢鉱泉を撤収。この後、縄文の湯に立ち寄り、温泉に浸かって、ようやく少し生き返りました。

所要時間8時間43分と予定から+10%程度の誤差ですが、全力を出し切ってようやく辿り着いた感じで、十分に休憩を取りながら歩いた感覚はありません。私の実力では、ガイドブックのコースタイムではとても歩けないようです。トレランシューズでも問題なく歩けることを確認できたこと、岩登り、沢下りのようなルートは、自転車+登山の際には避けるべきとわかったことは大きな収穫でしたが、

登山を甘くみてはいけない!

ことを身をもって体験したことが最大の収穫です。