富士川から安倍川へ、豊岡梅ヶ島林道を行く。(前編)
長らく通行止となっている県境の峠越え林道がいくつかあります。埼玉県秩父市中津川から長野県境の三国峠に至る中津川林道(今年6月に通行止解除の見込み)、山梨県早川町雨畑から静岡県境の山伏峠を越えて畑薙第二ダムに至る井川雨畑林道、そして山梨県身延町大城と静岡県梅ヶ島温泉を結ぶ豊岡梅ヶ島林道などです。この中で、豊岡梅ヶ島林道が、昨秋に通行止解除となりました。実に7年ぶりの通行止解除ですが、昨年のような台風が到来するといつ通行止になっても不思議ではない道です。私がルートの参考にさせていただいている先輩方の行動は素早く、既にこの林道を走破されています。しかし、全長20km以上の道のり、最高地点の安倍峠は標高1,400mを超えます。かつ、梅ヶ島温泉、身延町大城のどちらも交通アクセスが極めて悪く、スタート地点に立つことも容易ではありません。私のようなヘタレがチャレンジできるとすれば、日照時間の長い春のシーズンしかありません。折しも真夏に等しい高温の週末となりますが、このチャンスは逃せないと覚悟を決めて出陣しました。
今回のルートは、JR身延線の身延を起点として、安倍峠を越えて梅ヶ島温泉、ゴールは静岡駅。当初、富士宮を起点として絶景林道の呼び声の高い湯の奥猪之頭林道を走り、山梨県下部温泉で一泊、翌日に安倍峠を越えて梅ヶ島温泉を目指すことを考えていましたが、この高温の中、2日間に渡って険しい山道を走るのは無茶と自粛しました。
4:45@最寄駅の根岸を出発し、大船、熱海、沼津と列車を乗り継ぎ、7:11@身延線始発駅の富士に到着。熱海での乗り換えがスムーズだったので、予定より一本早い列車で到着です。しかし、甲府行きの発車時刻は7:45なので、34分間の乗り換え待ちとなりました。
身延線は、西富士宮まではJR東海、その先甲府まではJR東日本となります。料金精算が複雑になりそうなので、この待ち時間を利用してSUICAを精算、身延までの切符を購入しました。
2両編成の列車が入線。輪行定位置の運転手席後ろのスペースに自転車を置こうとしましたが、その場所には料金精算ボックスが設置されてました。さすがと自転車を置くのは憚られます。出発準備中の運転手さんに確認しました。
私:ここはダメですよね? 後ろの車両の最後部なら自転車を置けますか?
運転手:そうですね、どこまで行かれますか?
私:身延です。
運転手:ならば後ろでも大丈夫です。
私:???
何故行き先を確認されたのか理解できないままに後部車両に乗車しましたが、その理由は発車してから判明しました。ワンマンカーは、無人駅では前の車両の最前部ドアしか開かないのです。身延は有人駅なので全てのドアが開き、後部車両でも問題なしということでした。
9:01@富士山と富士川を眺めながら一時間ほど揺られ、予定通り身延駅に到着。日蓮宗総本山の久遠寺のお膝元だけあって、駅前は整備されています。
9:21@自転車を組み立て身延駅をスタート。富士川を越えて、身延の町へと向かいます。覚悟はしていましたが、既に暑いです。
電柱が邪魔でなかなか撮影ポイントが見つからなかった身延山。身延高校のところで、ようやく撮影できました。
久遠寺にも立ち寄りたいところですが、今日は先を急ぎます。それにしても立派な山門です。
何の変哲も無い交差点ですが、ここが豊島梅ヶ島林道の入口です。まずは、交差点の先のコンビニで食料を調達します。
10:00@準備完了、安倍峠へ向けて大城をスタートします。この地点の標高は250m、標高差1200mのヒルクライムです。
リアルなポーズの案山子達の声援をいただきました。
軽くひと登りすると、特徴的な山並みが見えます。方向からすると毛無山、湯の奥猪之頭林道は、あの辺りのはずです。
最後の集落を通過し、カーブを曲がると大きな砂防ダムが見えてきました。
大量の土砂が大城川の河岸を埋め尽くしています。
10:29@赤石橋のところで林道の標識が現れました。ここから先が長年通行止となっていたため、ストリートビューの写真はここで途切れています。この橋の先から斜度がアップし、本格的なヒルクライムが始まりました。
河原の風景に自然の猛威を感じます。増水した大城川は、かなり凶暴そうです。
熱中症対策として濡れタオルを首に巻いていたのですが、ここまでの区間、日を遮るものはなく、タオルが乾いて冷却効果が低下してきました。オーバーヒートする前にと、道端に自転車を停め、水を求めて沢へ降ります。冷たい水の効果は絶大でした。
10:48@林道ゲートに到着。前方の看板に、<安倍峠11km> と記されています。ヤビツ峠と同じような距離です。が、ヤビツの標高差667mに対して、安倍峠までの標高差は900m以上、久しぶりに悶絶ヒルクライムを体験できそうです。自転車に乗れない二ヶ月を経験したので、ワクワクします。
平均斜度8%、楽じゃないけど無理じゃないヒルクライムです。暑さとの勝負になりそうです。ヘルメットを脱いでリュックにくくりつけ、暑さ対策の第二弾としました。
この林道、精神的ダメージの大きい直線的な上り区間はほとんどありません。山腹をひたすらグネグネと進みます。ガードレールから下を覗くと、そのグネグネぶりがよくわかります。
11:18@標高700m付近、妙に視界の開けたコーナーが現れました。きっとアレが見えるのでしょう。
靄っていますが、期待通りの富士景色です。空気の澄んだ季節ならば、絶景のはずです。ここから峠までの区間は、この景色を眺めながらのヒルクライムとなります。
秘境感満載の林道ですが、予想以上に交通量がありました。と言っても15分間隔くらいで車とバイクに遭遇する程度ですが、この場所を考えると驚きの交通量です。自転車とは一台も出会っていません。この気温の中、この林道を訪れる物好きは私だけのようです。
11:34@タオルの冷却効果がダウンしたので、再び、沢へと降ります。
11:55@前方の沢筋に上下2本の橋が見えてきました。いつもならばゲンナリするところですが、この日は何故かウキウキ気分です。暑さで壊れてきています。
この林道の路面状況ですが、かなり悪いです。路面に細かい砂利が散乱していました。雨水で流されて来た砂利のようです。上りはともかく、下りはかなり慎重に走らないと危険です。また、橋の前後には砂が堆積していて、迂闊に飛び込むと路面状態の急変でバランスを崩します。タイヤはグラベルキングの方が正解だったかもしれません。高度を上げるにつれ、路面状況はどんどん悪化していきました。
12:16@遠くに見えた2つ目の橋に到達。
橋の上からは、先ほど見上げたポイントが見えます。
12:16@大城をスタートして2時間が経過、標高も1,000mを突破、そろそろ休憩と思っていると、富士山&木陰&ベンチ代りの段差という好立地の場所がありました。クーラボックスに入れて持参した冷えたドリンクで喉を潤し、梅のおにぎりを1つ飲み込みました。ここまで標高を稼ぐと吹く風も爽やかです。
後編に続く